第27回― 神話と自然が織りなす日向神

自然と人工物が調和する日向神峡――
自然と人工物が調和する日向神峡――
横町町家交流館のある八女福島地区は、江戸時代からの白壁の町並みが残る「伝統的建造物群保存地区」です。ここからおよそ25キロ離れた矢部村の山あいに日向神峡(ひゅうがみきょう)と呼ばれる渓谷が広がっています。周辺にはさまざまな奇岩や巨岩がそびえ立ち、その中でもハートの形に見える巨岩が、恋愛成就のパワースポットとして人気を集めています。
今回は自然の雄大さを感じられる日向神峡についてご紹介します。
『奇岩、巨岩に囲まれた日向神』 ■神々が美しさに引かれた渓谷日向神峡は福岡県八女市矢部村の山間部、矢部川の上流にある渓谷で、約6キロにわたって広がっています。この渓谷の名前である「日向神」は、かつて日向国(現在の宮崎県)から神々が神馬(しんめ)に乗ってこの地を訪れ、そのあまりの美しさに時を忘れて遊んだという伝説に由来する、と伝えられています。 その伝説にちなんだ奇岩や巨岩をご紹介します。日向の神が誕生した際、こつぜんと出現した神盥岩(みたらいいわ)、神馬の足跡がしるされているという千畳岩、枕や角木、または神殿の反った屋根の切り口が数百連なるように見える形の枕岩、正月に幸せをもたらす歳徳神(としとくじん)がおられる亀ノ尾岩がありました。しかし残念なことにこれらは現在日向神ダムの底に沈んでしまい、見ることはできません。

ただそのほかにも奇岩や巨岩を目にすることができ、中でも真ん中にぽっかりと穴があいている「蹴洞岩(けほぎいわ)」は、日向神峡を象徴する存在で、神々が乗っていたとされる神馬が蹴って穴を開けたことでその名前がついたとされています。また、峡谷の岩壁の一部がハート形に見える「ハート岩」も日向神ならではの名所です。特定の角度からのみ現れるハート形は、偶然が重なった自然の造形美の一つで、今では縁結びや恋愛成就の象徴として多くの人から親しまれています。
■過去と現在の記憶をつなぐ日向神ダム福岡県内で最大規模の貯水量を誇る日向神ダムは、1960(昭和35)年に日向神峡の自然でできた地形を利用して作られました。この日向神ダムを建設するきっかけとなったのが、1953(昭和28)年に発生した西日本水害でした。九州北部などに死者・行方不明者1001名、浸水家屋45万棟という大きな被害をもたらし、3月27日に紹介した「黒木の大藤」にも壊滅的なダメージを与えました。この水害を踏まえ、矢部川の治水と大牟田地域への電力供給を目的に築かれ、当時の黒木町と矢部村の216世帯が水没することになり、日向神峡の風景は大きく変わることになりました。

当館から日向神までは車で40分ほどの場所に位置しています。八女市と熊本県小国町を結ぶ国道442号線沿いにあるので、ドライブ途中の立ち寄りにもおすすめです。今回ご紹介した「蹴洞岩」や「ハート岩」のほかにもさまざまな奇岩や巨岩を見ることができます。ぜひ足を運び、その風景をご自身の目でお確かめください。
■次回予告来週は江戸時代から酒造業を営んでいた旧木下家邸宅をご紹介します。





