第30回― 山内水天宮が見守ってきた水の記憶


横町町家交流館のある八女福島地区は、江戸時代からの白壁の町並みが残る「伝統的建造物群保存地区」です。福島地区の東側に位置する山内地区は、八女市の南部を流れる矢部川とともに暮らしを築いてきました。この地区には地域の人々が水と向き合い、祈りを重ねてきた歴史を今に伝える「山内水天宮」があります。
今回は「山内水天宮」とその境内に残る水害碑、そして初夏の夜を彩る花火大会についてご紹介します。
『山内水天宮と水害の記憶』 ■水をつかさどる神を祭る福岡県八女市山内地区に鎮座する「山内水天宮」は、平安時代末期の1180(治承4)年に即位した安徳天皇とその母である建礼門院(けんれいもんいん)を祭る神社として知られ、古くから「水の神様」として地元住民のあつい信仰を集めてきました。

なぜ当時の天皇やその母が祭られているのかといいますと、1185(元暦2)年での壇ノ浦の戦いで、平家側についていた安徳天皇一族は敗れ、海へ身を投げたとされています。その際「水に沈んだ天皇は御霊(みたま)となって災いをもたらす」と恐れられ、この御霊を祭って鎮めることで、水害を防ぎ、水の恵みを得ることにつながると信じられるようになりました。

また山内地区は矢部川の豊かな水に支えられる一方で、ひとたび雨が続けば氾濫や浸水に悩まされてきた土地でもあります。こうした自然と隣り合わせの暮らしの中で人々は水を畏れ、その力を鎮めるために安徳天皇らの御霊を祭ることにしました。境内には他にも、過去にこの地を襲った大水害を後世に伝えるとされる水害碑も建てられていますが、当時の文書は残っておらず、水天宮本殿同様、誰がいつ建てたものなのかは不明です。
『夏の夜空を彩る花火大会』 ■祈りの締めくくりとしての花毎年5月の子どもの日になると山内水天宮では、水難よけや五穀豊穣(ほうじょう)、家族の無病息災を祈願する大祭が午前9時から午後6時まで開催されます。そして大祭のクライマックスを飾るのが、山内水天宮東側(星野川河川敷)で行われる花火大会です。今年は5月5日(火)午後7時半から打ち上げられます。川面に映る花火の光景は、夜空の花火が美しく映り込むことから地元では「逆さ花火」と呼ばれ親しまれています。
山内水天宮は当館から車で10分の場所に位置しています。近くには4月17日に紹介した、中島内蔵助が命を捧げ作られた「山の井堰(せき)」もあります。ぜひ現地に足を運び、山内水天宮や山内地区が伝える「水の記憶」に触れてみてください。
■次回予告次回は阿形(あぎょう)と吽形(うんぎょう)の2体の大きな仁王像を門に構える谷川寺(こくせんじ)についてご紹介します。





