第51回― 土橋八幡宮の神幸行事


横町町家交流館のある八女福島地区は、江戸時代からの白壁の町並みが残る「伝統的建造物群保存地区」です。この地区には、歴史ある町並みと共に受け継がれてきた伝統行事が数多く残されています。その一つが土橋八幡宮で行われる「神幸行事」です。約400年以上続くとされるこの行事は、現在八女市内で唯一とされる御幸(ごこう)の形を残す貴重な祭礼で、市の無形民俗文化財にも指定されています。
今回は地域の人々によって大切に守り継がれてきた土橋八幡宮の「神幸行事」をご紹介します。
『人々の熱意で受け継がれる400年』 ■氏子の願いをのせて巡る神「神幸行事」は、境内に市場が広がる土橋八幡宮で、毎年10月17日から19日にかけて行われます。土橋八幡宮は784(延暦3)年、福島村と稲富村の境に創建され、両地区の氏子が共に信仰していました。その後、1601(慶長6)年に、福島城築城の際に現在の位置に移築されました。
初日の17日に土橋八幡宮で神事が執り行われ、その後御神霊をのせたみこしは、お旅所へ向かいます。お旅所は、神様が一時的に滞在する仮の御座所で、稲富地区に設けられています。御神霊はそこで2日間滞在し、おこもりが行われ、同地区の氏子の願いを聞くとされています。そして19日にはみこし行列が土橋八幡宮に帰幸し、一連の神事を終えます。こうした一定期間別の場所に滞在した後に、再び神社に戻る一連の行事は御幸と呼ばれています。

行列にはみこしをはじめ、獅子舞や稚児行列、お供人が加わり、かねや太鼓の音を響かせながら八女福島の町並みを練り歩きます。中でも目を引くのが、赤い毛のかぶり物を身に付けた子どもたちによる浮立(ふりゅう)です。子どもたちが太鼓などを打ち鳴らしながら進む姿は祭りに華やかさを添え、多くの見物客を楽しませています。また、道中で披露される獅子舞には、地域の無病息災や五穀豊穣(ほうじょう)への願いが込められており、「神幸行事」の大きな見どころの一つとなっています。
■八女の歴史や文化を今に伝えるかつて八女市内には、御幸や流鏑馬(やぶさめ)などを伴う祭礼を行う神社が数多く存在していました。しかし時代の流れと共に多くが途絶え、現在まで御幸の伝統を守り続けているのは土橋八幡宮のみとされています。

行事当日には、子どもから大人まで多くの氏子たちがみこしの担ぎ手や獅子舞役を担うなど、世代を超えて祭りを支えています。地域の絆を深めながら受け継がれてきた神幸行事は、八女の貴重な民俗文化として高く評価されています。単なる祭礼にとどまらず、八女の歴史や文化、人々の思いを今に伝える大切な存在となっています。
土橋八幡宮は当館から徒歩で数分の場所に位置しています。今年の神幸行事の日程は来週末です。秋の澄んだ空気の中、白壁の町並みを進むみこし行列や子どもたちの浮立、勇壮な獅子舞を見学しながら、八女に息づく伝統文化に触れてみてはいかがでしょうか。
■次回予告次回は600年前の歴史を今に伝える矢部村の古社、老松天満宮に着いてご紹介します。





