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第39回― 祈りや供養の心を伝える提灯

200年前から光をともす――

 横町町家交流館のある八女福島地区は、江戸時代からの白壁の町並みが残る「伝統的建造物群保存地区」です。この地域には、八女茶や福島仏壇など多くの伝統工芸品があります。その中でも歴史が長い工芸品が「八女提灯(ちょうちん)」です。

 今回は八女を中心に作られ、全国一の生産量を誇る「八女提灯」についてご紹介します。

『職人の技と明かりが織りなす伝統の美』

■八女提灯の歴史

  200年以上の伝統を誇る「八女提灯」は、八女市を中心とする筑後地方で作られています。この地方には、一級河川の矢部川から流れ、和紙の原料となる清涼な水や骨組みに用いる竹など、提灯に欠かせない自然資源が豊富にそろっていました。加えて、昔から商家や寺社が多く、提灯は日用品として注目されていました。

 その始まりは1816(文化13)年頃、八女郡福島町の商人・荒巻文右衛門が提灯の表面にサザンカやボタンなどの仏花を描き作った「場提灯」とされています。当時は福島町で作られたことから「福島提灯」と名付けられました。その後郡内で提灯産業が発達し、1854~60年(安政年間)に飛躍的な進化を遂げます。福島町の職人・吉永太平が、骨組みの竹を細かく割き、1本の竹をらせん状に巻いて作る「一条らせん式」と、明かりをともす部分である「火袋」に山水画や花鳥画を描いた和紙を用いる技法を編み出しました。

 明治時代になるとさらに需要が急増。しかし絵付けは一つ一つ丁寧に手描きしていたので大量生産はできません。そこで吉永太平の弟である伊平が、複数の提灯を並べて同じ工程を連続して描く「早描き法」を考案。その結果制作時間が大幅に短縮され、アメリカやイギリスなどの諸外国へ輸出されるまでに発展を遂げました。この頃から生産地が八女地域一帯に広がったことから「八女提灯」と呼ばれるようになっていきました。

■伝統の技が生み出す美しさ

 「八女提灯」の最大の特長は、「一条らせん式」と呼ばれる独自の構造です。1本の長い竹ひごをらせん状に巻いて骨組みを作るため、継ぎ目が少なく、均整の取れた美しい提灯を生み出します。その制作には各工程に職人が分かれた分業制で、それぞれの技能が連携して、均一で美しい丸みを帯びた一つの提灯ができあがります。作業工程は大きく以下の五つに分けられます。

・型組み:木製の羽根型を組み立てて、骨組みを作成

・ヒゴ巻き:1本の細い竹をらせん状に組み立てた骨組みに巻き付ける

・和紙・絹張り:骨組みに和紙を張り、つなぎ目の位置をそろえる

・ドウサ引き:張った紙にドウサと呼ばれるニカワやミョウバンなどを溶かした水溶液を塗り、つやと強度を与える

・絵付け:火袋に草花や風景などを描く(早描き法により下書きなしで仕上げることができるという)

 2001(平成13)年7月3日に経済産業大臣によって伝統的工芸品に指定された「八女提灯」。八女福島の町中を歩くと、歴史ある白壁の建物と共に提灯が飾られている風景に出合うことができます。そこには職人たちが長い年月をかけて守り続けてきた伝統文化の息づかいが感じられます。当館から徒歩で5分ほどの八女伝統工芸館では「新作 八女盆提灯展」が8月2日(日)まで開催中です。八女提灯協同組合各社による新作や自慢の提灯が一堂に会します。ぜひ「八女提灯」がともす温かな明かりと匠(たくみ)の技に触れてみてはいかがでしょうか。

■次回予告

 次回は九州で最も古い歴史を持つ「八女手すき和紙」についてご紹介します。

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