第33回― 無事を願う武士の誓いから始まった津江神社


横町町家交流館のある八女福島地区は、江戸時代からの白壁の町並みが残る「伝統的建造物群保存地区」です。この地区の東側、八女市黒木町の閑静な住宅街の一角に、静かにたたずんでいるのが津江神社です。その境内には、街中とは思えないほど深い緑が広がり、訪れる人々を包み込むような静寂と神聖な空気が漂っています。この神社は、今から800年以上も前に創建されたと伝わり、境内には創建時に植えたとされる大クスがそびえ立っています。
今回は津江神社と黒木町のシンボルである大クスについてご紹介します。
『誓いが生んだ神社と地域が誇る大クス』 ■津江神社の歴史と由緒黒木の大フジから西に1キロ弱離れた位置に鎮座している津江神社は、平安時代末期の1169(嘉応元)年に、猫尾城初代城主であった黒木大蔵大輔源助能(みなもとのすけよし)によって創建されたと伝えられています。当時、筑後地方の有力武士として活躍していた源助能は、ある時豊後国の大友氏から反逆の疑いをかけられ、現在の大分県日田市中津江村にあたる津江の地に幽閉されてしまいます。具体的な理由は不明ですが、当時の領土を争う武士同士の対立によるものと考えられています。

幽閉の身となった源助能は「この無実の疑いがはれ黒木に帰城できたときは、津江宮を黒木の宗廟としてお祀りします」という誓いを立て、祈り続けました。やがて無実が認められ、帰城を果たします。そして誓いどおり、津江の地の神をこの地にうつし、津江神社を創建しました。
こうして生まれた津江神社は、1人の武士の誓いから始まりながらも、次第に地域全体の神様としても崇敬され、今では五穀豊穣(ほうじょう)や家内安全、無病息災を祈る信仰の中心となっています。
■大フジと並ぶ町の象徴津江神社の境内でひときわ存在感を放つのが、津江神社の御神木である大クスです。この木は、神社創建の際に源助能が自ら植えたとされ、樹齢800年以上。悠久の時を生きる巨木へと成長しました。

樹高は約40m、幹周りは約15mにもおよび、しっかりとした太い根が大地を力強くつかみ、四方に大きく枝葉を広げるその姿は圧巻です。この大クスは1954(昭和29)年に福岡県の天然記念物に指定され、地域の誇りとして大切に守られてきました。また、その美しい木形から、日本樹木医会の「健康優良樹」にも選ばれており、学術的にも非常に価値の高い大樹として評価されています。黒木の大フジと並び、この大クスは黒木町を象徴するかけがえのない存在となっています。
津江神社は当館から車で約20分の場所に位置しています。そこには、歴史と豊かな自然、そして信仰が静かに息づいています。日常を忘れさせる清らかな空気と時の重みを感じる特別なひとときを過ごしに、ぜひ足を運んでみてください。
■次回予告次回は国を救うために命を捨てた男が最後、星野川に刀を沈めた話についてご紹介します。





